時々は犬と一緒に

ある日友達のさくらちゃんからレッスンの依頼があったので家に行ってみると、案の定、おもしろいこと(?)を言い出しました。

「ベッドをぐちゃぐちゃにしちゃうし、ソファは掘るし、大きなクッションを振り回すし、走るし、飛び跳ねるし、もうどうにかしてって感じ!」

それを聞いた私は??状態。だって、それが犬じゃないの? そこで私は質問してみました。「『ホープ』がベッドをぐちゃぐちゃにするのを、さくらちゃんが「イヤだ」ってことだよね?」。予期しない質問だったようで、さくらちゃんはキョトンとしていました。

ところでベッドをぐちゃぐちゃにすることは、そんなに悪いことなのでしょうか。ベッドをベッドと決めたのは(当たり前ですが)飼い主さんです。犬はそれを「ベッド」とは思っておらず、ふかふかしていて気持ちいいから乗りたいときは乗りますが、軽くて持ち上がるし、振り回したら楽しかった!………。犬はそんな風にとらえているのだと思います。

そう言えば、人だってやりますよね。枕はもともと投げるものではありませんが、投げてみるとけっこう楽しいそうです。少し調べただけでも、「枕投げ」に関するたくさんの情報があってびっくり。ほら、人だってやってるじゃないですか(笑)。

ベッドをぐちゃぐちゃにしたからといって犬を叱るのは、理不尽だということがご理解いただけたでしょうか。

犬にしてみれば、「こんなに楽しいのに何で一緒に楽しんでくれないんだろう?」、「何で叱られるんだろう?」と、かえって飼い主不信に陥るかもしれません。仲良くなりたい相手とは、できるだけ楽しいことを共有したいものです。そして、私からさくらちゃんへ次の質問を続けました。

「では、クッションを振り回すのは、悪いこと?」

「悪いというか、できればしてほしくない……」

「なぜしてほしくないの?」

「はこりが立つし、破れても困るし」

「こんなにホープが楽しそうなのに、ほこりが立たないことのほうが大切なのかな?そして、破れなければいいの?ソファは掘ってはいけないもの?」

「……」

さくらちゃんは考え込んでしまいました。

そこで私は、しつけにおいて(今回のレッスンにおいて)いちばん大事なテーマについて話しました。

「仲良くなるために大事なのは、受け入れること。そして、人と犬という異なる種が一緒に暮らすときには、やってほしい行動を教え助けるのが重要。それが受け入れるということ。」

 

すると腑に落ちたのか、さくらちゃんの顔がすっと明るくなり、大きくうなずいてくれました。インストラクターでもある彼女は、アメリカンインディアンの教えをヒントにした私のモットーを、すぐに理解してくれたようです。

それから、ベッドはぐちゃぐちゃにされていいものに。クッションは振り回されたくなければ、手の届かないところに置く。もしくは、振り回してもいいものを与えてやって、ソファは破れないように大きめの厚いカバーで覆われました。

受け入れられる範囲で、ホープがやりたいことをやれるようにしてもらったところ、何よりもさくらちゃんの気持ちが楽になり、ホープと通じ合えるようになったそうです。

たとえば、ホープがソファを掘るときの様子で、そのときのホープの気持ちがわかるようになったのだとか。忙しくて散歩に行けなかった日はすごく激しく、でも楽しそうに「ホリホリ&フカフカ」して、ふんぞり返りながらさくらちゃんに「どや顔」でアピール。

ホリホリは、1日の締めくくりの作業でもあるようで、寝る前にホープ自身が落ち着くための儀式にもなっているようです。「オレ、掘ってますけど、ど~だ~!」とばかりにさくらちゃんをチラ見するので、「いいよ~、どんどんやっていいよ~」と声をかけつつ、たまに一緒にホリホリしてやるととても喜ぶそうです。一緒に掘るなんて、楽しそうですね。

それにしても、あのさくらちゃんが、ホープと一緒にソファを掘るようになるとは驚きです(笑)。

さくらちゃんは、この時間を「ホープをとても愛おしく感じる大事なコミュニケーションの時間」として、大切にしているそうです。

自分が発想の転換をすることで、周囲からも「ホープの顔つきが変わった」と言われるほど、仲良しになったさくらちゃん。これからは、もっともっとホープの新しい一面を発見し、一緒に成長できるといいな、とのことでした。

 

犬は「いたずら」ではなく、「やりたいから」やっている

前回に挙げた犬の行動はどれも、決して飼い主を困らせようとしてやっている「いたずら」ではなく、「やりたいから」あるいは「楽しいことが起きるから」やっている行動だと思います。

ほかにやることがなく犬が暇になる。すると作業意欲がムクムクと湧き、勝手に作業を見つけてそれに取り組む。これが「いたずら」の正体なのです。こんな行動をする犬は、悪い犬なのでしょうか?私は、いたずらは作業意欲の表れで、すばらしいことだと思っています。

麻薬探知犬をトレーニングするビデオを見て知ったのですが、飼い主に見放され、捨てられて施設にいる犬たちのなかから、作業に向いている犬を探すことも多いそうです。彼らの作業意欲は、高度なトレーニングを入れるのにふさわしいのです。作業意欲が高い犬に作業を与えてやらないと、壁をかじる、ドアを突き破る、床を掘って穴を開ける、ソファを破壊するなどの作業を勝手にやってしまいます。

「何がしかの作業をさせなければいけなかったこと」を理解ができない飼い主が、扱いきれなくなって彼らを捨ててしまうようです。

わが家では、家を留守にするとき、もういたずらをする意欲がなくなったと思われる13歳の『コタ』と、もともとあまりいたずらをしなかった6歳の『ラー』については、ハウスに入れないで出かけています。

私が家を出る刺激を少しでも軽減しようという気持ちから、出かけるときの儀式として、コタとラーを座らせて待たせ、床におやつを一粒ずつ置いてやり、「ヨシ」の合図で出かけるようにしています。ところがある日、ガラス越しに見てみると、ラーがすばやい動きでコタの分まで食べてしまっていることを発見。何とかコタにも食べさせたいと思い、いつもお客さまにおすすめしているパズルを使うことにしました。

このパズルは知育玩具と呼ばれるもので、犬が頭を使っておやつをゲットするようにできています。パズルならいくつかおやつを仕込めるし、時間も稼げるので、コタがひとつも食べられないという事態は避けられます。

しかし、それと関係があるかどうかは定かでありませんが、パズルをやらせるようになってから割とすぐのこと。いつものように留守番をさせて家に帰ると、何とフタつきのゴミ箱があさられていました!

家の中で自由にしていたのは、作業意欲が低いはずのコタ&ラーのコンビ。一体誰がやったんだろうと思っていると、コタがトコトコとゴミ箱に近づいて、フタを開けようとしました。つまり、犯人はコタ!

この13年間、そんなことは一度もしたことがなかったのに、これはうれしいと言うか、びっくりです!

私の勝手な想像なのですが、パズルにチャレンジさせたことで、コタの脳が刺激されて作業意欲が上がったのではないかと思います。老化防止として、もしくはエネルギーの余っている犬に、このようなおもちゃを与えるのはとても良いことだと実感しました。

とは言え、ゴミをあさられるのは、内容によっては食べてしまっては危険なものもあるし、片づけるのも大変。とりあえず出かけるときには必ずゴミを出しておくようにしたいのですが、私の脳が忘れないようにするのが大変です(笑)。

ここは策を講じる必要があります。わが家では、先日高さ65㎝のしっかりしたゴミ箱(スチール製)を購入しました。6800円なり。とにかく、犬より私たち飼い主が賢くなる必要がありそうです。